久保田奈穂: Foundations
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Dog Years
$62.00 USD

2026年07月30日から順次発送予定

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ニューヨークを拠点に活動する写真家・久保田奈穂の作品集。2006年から、特に2019年から2024年にかけて、ニューヨーク市全域に点在するイエローキャブの修理工場を記録してきました。あの黄色い車体は、傷を直すたびに専用の塗装ブースで再び黄色く塗り直されます。街の象徴をまっとうな黄色に保ち続けるための、地味な反復作業です。けれども長い年月のあいだに、噴霧された塗料はブースの壁や床に少しずつ積もっていき、誰も意図しないまま、層をなした幻想的な空間がそこに立ち上がっていきます。

近年は、UberやLyftといったライドシェアの台頭によってイエローキャブの数は減り続け、それを支えてきた修理工場もまた、ひとつ、またひとつと姿を消しつつあります。本書はその失われていく場所のアーカイブでもあります。写っているもののほとんどは、写っているそのときにすでに、半分は消えかけているものたちです。そこにはもう存在しないものが、それでもなお気配として現場に残り続ける。ジャック・デリダ(Jacques Derrida)が「 Hauntology(憑在論)」と呼んだ、あの薄い時間の手ざわりが、これらの写真には静かに漂っています。

写真の多くは閉店後に撮られていて、人の姿はありません。建築写真を本業とする久保田の眼は、空間を全景として捉えると同時に、車の部品が偶然つくり出す配置や、塗装ブースの一部分へと、思いがけずクローズアップしていきます。一枚のなかに、建築家の俯瞰と、細部に取り憑かれた者の接写とが、ふしぎに同居しています。久保田が強く惹かれてきた塗装ブースは、空間の類型として見れば、アーティスト・スタジオの極端なかたちのひとつとも言えるかもしれません。建築はほとんど消え去るかのように後景へ退き、黄色を塗り続けるという反復そのものに、すべての主役性が委ねられているからです。

人の気配を排しつつ、整然と並ぶ車の部品や塗装ブースといった「舞台装置」にそっと光を当てることで、久保田の写真は、そこで営まれてきた労働の記憶や、幾層にも重なる時間の痕跡を、静かに映し出しています。

久保田奈穂 Naho Kubota
nahokubota.com
ニューヨーク在住のアーティスト/写真家。これまでに、OMA、SO-IL、ニュー・ミュージアム(New Museum)、フリーズ(Frieze)、ヴィトラ(Vitra)、パトリシア・ウルキオラ(Patricia Urquiola)など国際的な建築設計事務所や文化機関と多数のプロジェクトを手がけるほか、コロンビア大学建築学部、ロードアイランド・スクール・オブ・デザイン(RISD)など教育機関とも継続的に協働。イスタンブール・デザイン・ビエンナーレ(2018)、ストアフロント・フォー・アート・アンド・アーキテクチャー(2016)などで作品を発表。建築、デザイン、アートの領域を横断しながら、空間と光の関係、都市の変容、モノと人の記憶といったテーマを探求しています。

ページ: 31
サイズ: 303 x 303 mm
フォーマット: ハードカバー
言語: 日本語、英語
刊行年: 2025
出版: Dog Years