Mysteries of a Communist Cave
建築史の記述を推理小説になぞらえて展開する建築書シリーズ『ガムシュー(Gumshoe)』第2作。
『ガムシュー』は、建築史の記述に新たなアプローチを導入するシリーズです。推理小説の形式にならい、理論や未実現プロジェクトではなく、実在する建築物そのものを調査対象とします。学術的でありながらも親しみやすく、読み物としての面白さも備えています。
シリーズ第2作となる本書では、英文学教授のライトル・ショー(Lytle Shaw)が、パリにある「フランス共産党本部(French Communist Party Headquarters)」を調査対象として取り上げます。この建築は、ブラジルの建築家、オスカー・ニーマイヤー(Oscar Niemeyer)がフランス共産党(French Communist Party)中央委員会のために設計したものです。
1965年に設計されたこの建築は、政党理論家たちが「表象」という概念に関する従来の前提を見直し始めていた時代に誕生しました。そのため、1960年代の政治的・建築的状況の変化を凝縮した縮図ともいえる存在です。
また、この建築は文字どおりマルクス主義的な構造物でもあり、「構造主義的マルクス主義」とは何であったのかを具体的に想像する手がかりを与えてくれます。ショーは、この建築を構成する要素を読み解きながら、ガラスのカーテンウォールに包まれた優美な建物と、洞窟のような形状を持つ議場空間を、映画、哲学、人類学、政治学といった多様な分野との対話のなかに位置づけていきます。
そして本書が提示する最大の謎は、おそらくこの「共産主義の洞窟」の所有者たちが、この象徴的な建築を、自らが構想する世界を視覚的に示す強力なイメージの源泉として、なぜこれまで十分に活用してこなかったのかという点にあります。
建築分析、政治思想史、文化理論、そして推理小説的な読書体験を融合させた本書は、オスカー・ニーマイヤーの代表作のひとつを新たな視点から読み解く試みとなっています。
ページ: 288
サイズ: 110 x 175 mm
フォーマット: ソフトカバー
言語: 英語
刊行年: 2026
出版: Park Books