Marc Nagtzaam and Ikuhisa Sawada OTHERS : Segment 1 - Process 1
“OTHERS”は、日本の写真家、澤田育久(Ikuhisa Sawada)とオランダのアーティスト、マーク・ナグツァーム(Marc Nagtzaam)の共同プロジェクトです。このプロジェクトは、長い距離の両極から始まり、二人のアーティストの軌道が、平行線に従ってお互いに向かって進む一連の経路のように、共有と分離の両方を兼ね備えた終わりを目指して、完全には交わることなく進みます。このプロジェクトの最初の記録集である本書は、東京での展覧会に向けて制作された一連の画像とスケッチを通じて、アートワークによる「コミュニケーション」の行為の記録として、二人の作品がお互いの引力の影響下に入るにつれて変化し適応する様子が描かれています。
本書は、表裏が異なる質感の紙を使用し、元の状態では完全に平らで、綴じられていないオブジェクトです。二人のアーティストの作品はあえて同じ面で見せることなく、それぞれ反対面に配置されています。このオブジェクトを半分に折ると、アーティストの軌道を刺し貫き、彼らを絡め取るような関係が現れますが、本が未綴じのままであるため、テクスチャと構造の違いを保ちつつ独立性を保持します。さらに、この折り曲げられたオブジェクトを裏返すことで、時系列と関係が逆転し、プロジェクトの対称的な性質が理解できるようになり、一つの道の結論に達するもう一つの始まりに導かれ、類似性と相違点、近接によるお互いへの影響や反応を通した有機的な変化と独創的な適応を示します。
「OTHERS : 三者」は、2021年にori.studioからリリースされた『c-site.3 : 他者の言語』にて協働し、それを起点に今回のプロジェクトが構想されました。プロジェクトは三つの地域で行われる展覧会と、プロジェクト全体を本の形式で再現したアートブックで構成されます。展覧会は、2023年6月に東京(The White)、同9月にアントワープ(FRED & FERRY)、2024年に北京(日程と会場は調整中)で開催し、全ての展覧会が終了後にプロジェクトの経過とインスタレーション、それぞれの作家の作品をを収録したアートブックがリリースされます。本展のテーマは、作品を通じたコミュニケーションと、それに伴う作品の拡張です。各々の展覧会は、最初にそれぞれの都市を拠点とする作家に他方の作家が作品を送り、受け取った作家はそれを解釈して会場構成を提案します。その後、そのプランを全員で共有し、作品の追加や会場の更新など各々の反応を取り込みながらインタラクティブに展示空間を組み立てていきます。各々の解釈によってもたらされる誤解や齟齬など、他者との間に生まれる予期されない要素も積極的に取り入れることで、作品に他者が侵入し、それをきっかけに作者の意図を超えて作品が有機的に変成されていくことを期待しています。
マーク·ナグツァーム (1968)
ホーフプラート(オランダ)を拠点に活動パターンや反復という一つの主要な主題に基づいた作品群を制作しています。彼は、情報の断片を集めるために無限の探索をするように、線、グリッド、円、単語や文章を使って制作し、彼の作品の反復とグラフィック構造は、ミニマリズムやコンセプチュアルな美学を彷彿とさせます。ナグツァームのドローイングのほとんどは、グラファイトの表面を暗く塗りつぶすことで構成されています。建築やグラフィックデザインの抽象化された要素、ファウンドフォトのディテール、以前のドローイングの一部などが、すべての作品シリーズの出発点となっており、これらの素材は、点、線、平面という基本的で初歩的な手段で還元され、ある種の構造を構築しています。
澤田育久(1970)
写真家。金村修ワークショップ参加。2014年よりオルタナティブ・スペース「The White」を主宰。カメラが持つ記録性や機械性を利用して、日常的な視覚で認識されていない、新たなものの見方を発見することを試みています。 2011年より継続的に取り組んでいる作品、“closed circuit”では、多くの人が見知っている公共の場所(駅)で撮影された写真を大きくプリントし、展示空間の中で重層的に展示。鑑賞者が写真の間を歩くことでイメージ同士が干渉し、関係性の解体と再構築によってもたらされる新たな風景の発生を試みました。
ページ: 130
サイズ: 220 × 290 mm
フォーマット: ソフトカバー
言語: 英語
刊行年: 2023
出版: ori.studio