Simon Popp: Trio (Limited Golden Vinyl)
リズムは単なる時間を刻むためのものではありません。それは私たちの内に本質的に備わった、本能的で儀式的な営みです。言語に先立つ最初の共同的行為であり、歌い、踊り、表現し、つながり合ってきた何千年もの人類の歴史を支えてきた中核でもあります。こうした原初的な理解を出発点に、ミュンヘンを拠点とする打楽器奏者のサイモン・ポップ(Simon Popp)は、新作『Trio』に向き合いました。本作は、セバスチャン・ヴォルフグルーバー(Sebastian Wolfgruber)とフルーリン・ミュック(Flurin Mück)という2人の打楽器奏者との初のコラボレーション作品です。
『Trio』の核心にあるのは、協働、遊び心、そして統合です。音楽を「集うための手段」として捉え、日本の哲学「金継ぎ」にも通じる感覚が貫かれています。割れた陶器を金で修復し、その継ぎ目を隠すのではなく物語の一部として受け入れる金継ぎのように、3人の異なるドラマー、3つの気質、3つのスタイルがひとつの表現体へと融合します。
「まるで3人でひとつの大きなセットを演奏しているように感じることが多い」とポップは制作を振り返ります。「ジャケットの石も、3つの部分から成るひとつの石なのです。」
ポップの歩みは、ゆっくりと展開してきました。ドラマーである叔父の影響で9歳から演奏を始め、オーケストラやパーカッション・アンサンブル、地元バンドなど多様な経験を重ねます。ロックやジャズに加え、スティーヴ・ライヒ(Steve Reich)のミニマル音楽からも影響を受け、リズムと反復がいかに豊かな音楽を生み出すかを学びました。ミュンヘンでのジャズ・ドラムの正式な学びを経て、ヴォルフグルーバーとミュックにも出会います。これまで「Fazer」、「9ms」、「Poeji」、「Polygonia & Simon Popp」などのプロジェクトや3作のソロ作品を通じて実験的な評価を築いてきましたが、『Trio』は音響的進化にとどまらず、哲学的転換でもあります。
本作は定期的なセッションから有機的に生まれました。小さなリズムの種や短いフレーズが、3人の対話を通じて育てられていきます。「ただ集まって、遊んで、冗談を言い合う。その楽しさから多くの音楽が生まれました」とポップは語ります。
「Wallride」ではスタジオの可動吸音壁をスティックで叩き、深い響きを生み出します。「High High Low」は2つの高音と1つの低音という小さなモチーフを変形・重ね合わせます。「Birkenschlag」は11/8拍子で非対称の躍動を描き、「OiOOiOiiOi」では左右のストロークが儀式的マントラのように反復されます。「Eggplant」では2つのグルーヴの上に自由な声部が重なり、浮遊する緊張を生み出します。
伝統的なドラムに加え、ウッドブロック、シンギングボウル、ゴング、寺院の鐘、金属パイプ、タングドラム、電子的テクスチャーなど多様な音色が用いられています。エコーやディレイ、サチュレーションといった処理は、音を遠ざけるのではなく、自然と人工、古代と現代、個と集合を結ぶ“金の糸”のように機能します。
『Trio』は音色と質感、触覚の祝祭です。人類は時代や文化を越えて、祝祭や祈り、悲しみ、結束のために音楽を用いてきました。手を叩き、足を踏み鳴らし、棒で打つ――身体でリズムを生み出すことは、人間性の核心にあります。本作は、共有された記憶としてのリズムと、親密な結びつきの可聴的表現としてのリズムを讃える作品です。
最終的に『Trio』は、単なるドラムのアルバムではありません。つながりのアルバムです。協働の喜び、不完全さの美しさ、そして人類共通の力としてのリズムへの賛歌です。ひび割れは隠されるのではなく、金で満たされ、祝福されています。
作曲: Simon Popp, Flurin Mück and Sebastian Wolfgruber.
録音: Noël Riedl.
ミックス: Simon Popp.
マスタリング: Martin Ruch.
プロデュース: Martin Brugger and Simon Popp.
アートワーク・コンセプト: Miro Maria Schachtner.
デザイン: Maximilian Schachtner.
フォーマット: 180g vinyl、スクリーンプリントPVCスリーブ
リリース: 2025
レーベル: Squama Recordings